温泉でびっくり(第1回)

「うっしっし〜。温泉楽しみだねえ。」
トロはパイオニア2のロビーで待っていた。ロビーにはいつものように多くの待ち合わせや、談笑しているもの達の姿がある。
「お、お待たせしました。」
少し多めの荷物を持っているセシールが息を切らしてやってきた。
「よし、追っ手が来る前に早速出発ー!」
「はいっ!」
トロはそう言って、セシールの手を引いて、転送ゲートに飛び込んだ。

「皆でお出かけ楽しいにゃ〜♪」
チャオはご機嫌で森を歩いていた。周りには、メビウス、ヴィクスン、ヴィーナ、フェリアーテ、プレア、ウルフがいた。ただ、チャオは何処に行くかは内緒にされていた。実際に知っているのはフェリアーテとプレアだけだったが、他の全員は特に気にする事も無く一緒に来ていた。先頭はフェリアーテとチャオが並んで歩いていた。
(今更だけど、内緒で良いのかねえ?あの二人に内緒tにしてびっくりさせたいからって言われたけから、突っ込まれなくて助かったけど・・・。))
フェリアーテは何とも言えない感じだった。
そんなフェリアーテの思いを気にするものは誰もいなく、それぞれ楽しそうにしていた。

「待てw」
ハオは思わず突っ込んだ。
「どうしたのハオ?」
シェイリーとカルーネはステレオで聞き返した。
「どうしたの?じゃねえ。ラグオルじゃねえか!」
ハオの言う通り、温泉の宿はラグオルの森の奥深くにあったのである。
「気のせい気のせい。そう見えるだけだって。幾つもゲート通ってきたじゃない?」
シェイリーの言葉に何も言わずジト目で見返すハオ。
「まあ、どっちだっていいじゃん。皆来るの待とう。」
「待て待て待て!」
カルーネは涼しい顔で、ハオの言葉に耳を傾ける事も無く先に宿に入っていった。

「ふっふっふ、なのじゃ。」
「ひええぇ。」
テムは妖しいサングラスをしたフォマールににじり寄られていた。
「お、おたすけぇ〜。」
そう言うなりその場から逃げ出した。転送ゲート近くまで来て、周りの人込みの中に飛び込んだ。人込みの中からこそーっと後から来ているフォマールを見たが、キョロキョロしているがどうやら見失った様で引き返していった。
「ふぅ。いったいなんだったのれしょ〜?」
息を整えながらテムは不思議そうに首を傾げた。
(そりに・・・どこかでき〜たよ〜なくちょうだたようなぁ?)
「ふっふっふ。甘いのじゃ。」
「!?!?」
後ろから突然声がしてびっくりして振り向く間もなく、後ろから回された手で口を塞がれて、テムは気を失った。

「おお〜。お宿だにゃ〜。」
チャオは目を輝かせて言った。
「温泉ってとこか。」
メビウスは宿を見ながら呟いた。
「流石はメビウスだね。内緒だったけど、ここで言っとくね。温泉宿にご招待。」
「皆はんようこそ、お越しやすぅ。」
何時の間にか、プレアもすぐ隣に来て二人は軽く会釈をして言った。そして、頭を上げた後、二人が先に入っていった。
「いらっしゃいませ。」
10人程の人間に迎え入れられた。
「今日からお世話になるにゃ〜。」
「はい。皆様お部屋にご案内致します。お荷物はこちらでお持ち致しますので。それでは、どうぞ。」
女将の案内で皆は部屋へと案内された。

「そこのフォマール何やっている。」
「なんなの・・・じゃ・・・。」
和夜は大きなリュックを背負っていた。声をかけたのはソニアだった。ソニアは和夜に銃口を付きつけていた。
「そのリュックから見える帽子付きのボンボンは何だ?」
あくまでも冷静に聞くソニア。
(ほ、本気なのじゃ・・・どうする・・・。)
和夜は冷や汗を流しながら黙っていた。
「返答が無かった場合、容赦無く撃つ・・・。5秒だけ待ってやる。5・・・4・・・。」
(ま、不味いのじゃ・・・。とりあえず回避なのじゃ。)
「わ、分かったのじゃ。言うから勘弁なのじゃ。」
ソニアは和夜の言葉を聞くと一旦ヤスミをしまう。
「さあ、話して貰おうか。」
「甘いのじゃ・・・。」
和夜はニッと笑うと突然煙の様になって行く。
「何っ!?」
ソニアは流石に焦ったが、反射的にヤスミを撃った。しかし、弾は服に穴を開けただけで貫通する。そして、本人とリュックは霧散して消えた。
「どう言う事だ!?」
呟いて、周囲を見まわす。周りは突然のヤスミの発砲に驚いてしゃがみ込んでいるものもいるし、ハンター達の注目を集めていた。それを見て、何でも無い、という仕草で手を振ると、ハンター達は興味が無くなったように見るのを止めた。
「仕方ない・・・。行くか・・・。ん?」
ソニアが行こうとすると、服の傍にチップが落ちている。拾い上げて、データを見てみると地図が出ていた。
「同じ目的地?」
ソニアは厳しい顔になって、すぐに走り出した。

「良い部屋だにゃ〜。おこたも温かいにゃ〜。ふみゃ〜。」
チャオはコタツの中で満足そうにしていた。他の皆はまた別の部屋に泊まる事になっていた。一人で部屋を独占状態だった。部屋は広かったがチャオはコタツから出ようとしなかった。
「そう言えば・・・。誰が誘ってくれたんだろ〜にゃ〜?」
チャオは気にしながらもふにゃ〜んとした声で言った。
「わーってるつーの!」
遠くから何か声が聞こえて、寝そうになったチャオは薄目を開けた。
「むにゃ?」
そうすると、足音が近付いて来て部屋の前で止まった。
「失礼します。こんにちは〜。」
「こんにちは。」
「ちわ〜っす。」
チャオは声のする方を見た。知らない二人の女性と一人の見覚えのある男性。
「こんにちはだにゃ〜。ってハオ!?」
「チャオ!?」
二人はびっくりして思わず声を上げた。
「あれ?ハオの知り合いなの?」
カルーネはハオのびっくりした態度を見て不思議そうに聞いた。
「ああ、良く知ってるぜ。待てよ・・・チャオがいるって事は・・・。」
「にゅ?」
ハオが一人で呟くのを三人はじーっと見ていた。
「なあ、チャオ、他の皆も来てるのか?」
「ちょっと待つにゃ。質問はこっちに先にさせてにゃ。一応お客様にゃんだし。」
ハオの問いに割って入るチャオ。
「すいませんねチャオさん。知り合いとはいえ弟がこんなんで。」
「こんなん、言うなw」
「にゅっくっくっく。」
チャオはハオとカルーネのやり取りを見て笑いを堪えていた。
「えっとにゃ。三人はどういう関係何だにゃ?」
「それは、俺からでもいいよな?」
チャオの質問を聞いてハオがそう聞くとカルーネとシェイリーは頷いた。
「あのな、この二人は俺の姉貴達。こっちがすぐ上のシェイリーでこっちが一番上のカルーネ。」
「おお〜。チャオだにゃ。今回はお誘いありがとにゃ〜。宜しくにゃ〜。」
チャオは紹介を受けた二人の方に頭を下げた。
「小さいのにしっかりしてるねえ。」
感心した様にシェイリーは言う。
「全く。それより、こんな小さな子と何で知り合いか後で聞かせてもらうからね。」
カルーネもシェイリーの言葉に頷きながらもハオを睨んで言った。
「何で睨むんだよ!」
(絶対勘違いしてるにゃ。)
チャオは分かってはいたが、話がここでややこしくなるとこれからの挨拶の時間に支障を来たすと思い言うのを止めた。
「じゃあ、こっちからの質問答えて貰うぞ。」
「うんっ!」
チャオは普通に答え様と思っていたのだが、次の瞬間両姉妹が無言でハオを掴んだ。
「おいおい!?」
「ふにゃ!?」
ハオは流石に良く分からずその場でもがいた。チャオの方も訳が分からず目をぱちくりしていた。
「いいから、来なさい。」
ステレオでそう言ったかと思うと、あっという間にハオは部屋から連れ出された。
「あたしへの質問は・・・いいのかにゃ???」
チャオは不思議そうにさっきまで三人がいた場所を見ながら呟いた。