クリスマスパーティー

「にゃひゃひゃひゃ〜♪」
チャオは酒瓶を片手に完全に出来あがっていた。
居酒屋「猫八」・・・
ここはチャオがメディカルセンターに勤めていた時に常連として通っていた居酒屋である。
内装はすっかりクリスマス用に装飾されていた。
居酒屋ではあるが、クリスマスケーキやローストチキンなどが並んでいる。今日はメディカルセンターの婦長のルーが貸し切ってチャオ達を呼んでいた。
「チャオの奴すっかり出来上がってるな。」
メビウスはヴィーナを抱えたヴィクスンと一緒に座って飲んでいた。
「まあ、楽しそうだから良いんじゃないのかい?」
「そうだな。俺等は俺等で勝手にやらせて貰うか。ほれ、ヴィーナ。」
「わ〜い。けーきなの〜。えへへ〜。」
大きなケーキをみて、ヴィーナは目をキラキラと輝かせていた。
「ゆっくりしていって下さいね。」
「ああ、呼んでくれてありがとな。そっちは旦那まだ中なんだろ?大変だな。」
ルーに声をかけられたメビウスはちょっと気の毒そうに言った。
「いえいえ、いつもの事ですし。遅れて来ると思いますから。どれにしてもヴィーナちゃん可愛いですね。」
ケーキと悪戦苦闘しているヴィーナの様子を見てルーは微笑んだ。
「はっはっは。子供は可愛いもんさ。ルーも早く作っちまえよ。」
「そろそろだと思いますんで。楽しみです。」
「そりゃあ、めでたいね。チャオには言ったのかい?」
「ええ、とても喜んでくれました。」
本当に嬉しそうにルーは言った。
「それでは、お邪魔しちゃうと悪いので。楽しんでいって下さいね。」
ルーはそれだけ言うと三人から離れていった。

「うっしっし〜。良いムードだねえ。ここは一発芸でもやらないとかな?」
「ヒック!」
トロは立ち上がろうとした時、隣からしゃっくりが聞こえたので見てみた。セシールが赤い顔をして目がトローンとしている。
「おりょりょ。酔っ払っちゃったかな?」
「トロさんものみましょうよ〜。」
いつもと口調が違う上に気のせいか目が据わっている。
「もしかして、あたしピンチ???」
トロは静かにその場を離れようとしたが、ガシッとセシールに捕まった。
「トーローさーん。」
「うひーーー!こうなったら自棄じゃー!」
トロは意を決して座り直してセシールと飲み始めた。

「はおさん、いいんれすかぁ?」
「ん?何が?」
テムに聞かれたハオは不思議そうに聞き返した。
「あたしはふぇりさんじゃないですよ〜?」
「んな事くらい分かる。」
ハオは少し不機嫌そうに答えた。
「じゃあ、なんでここに〜?」
「俺は酒は飲まんしあの二人の話の邪魔するつもりねえ。」
ハオの言葉を聞いてテムが見るとフェリアーテはソニアと話していた。
「うふふ〜。もしかして、はおさんこえをかけるのがはづかしぃ?」
「まてw」
そう言いながらハオはテムの両方のほっぺたを掴んでいた。
「!?いひゃいれふ〜。」
テムは涙目になってじたじたしていた。
「余計な事言うからだ。もう言わないか?言わないなら放してやる。」
テムは涙ぐみながらもコクコクと頷いた。ハオはその様子を見て手を放した。
「あうぅ。いたかったですぅ。」
そういいながら、ほっぺたを撫でた。
「自業自得だ。」
ハオはそう言ってちょっとフェリアーテの事を見ながらジュースを飲んだ。

「良いのか?私と話をしていても。」
ソニアは少しハオの事を見ていった。
「ん?ああ、良いんだよ。ハオが変に意識したら折角のパーティー楽しめ無いだろ。それに、酒飲まないみたいだからね。」
「もう、飲んでも良さそうなものだがな。」
「まあ、いろいろあるんじゃないのかい。気にしてもしょうがないからこっちはこっちでのんびりやらせてもらおうかね。たまにはこういう賑やかな所で飲むのも良いだろ?」
「ふっ、そうだな。いつもの静かなバーとは違って、たまには良いかもしれない。」
少しだけ口元を緩めてソニアは言った。
「それじゃあ、乾杯。」
「乾杯。」
二人は騒がしい中静かに乾杯していた。

「にゅふふふ。」
チャオは何かを考えているらしく、空になった酒瓶を置いて入っているものと入れ替えて持ち直した。その後獲物を狙う目で周囲を見渡していた。
「トロとセシール漫才やりまーす。」
周りも大分出来あがって来ており、二人の酔っ払いの漫才は馬鹿受けしていた。
「うっしっし〜。あたし達の時代がきた〜。」
「トロさんちょーてんを目指しまひょー!」
二人はその後も周りを相手に酔った勢いも手伝ってかテンション最高潮で笑いを誘っていた。
「おおぅ。きょうのとろさんさいこ〜ですねぃ。」
「やべえ、マジ面白いぞ。トロじゃないみたいだw」
テムとハオの二人はトロとセシールの漫才を見て笑いながら感心していた。
「とろさ〜ん、んぎゅ!?ゴポポ!?!?」
隣で変な音が聞こえたのでハオは思わずテムの方を向いた。
「ほえぇ。ぐるぐるまわるぅ。」
テムはフラフラした後ボテッと倒れて目がぐるぐるの状態になっていた。
「何だ!?おいっ、テム大丈夫か?」
ハオは起こっている状況が飲み込めず、テムを軽く揺すりながら頭に「?」マークが幾つも回っていた。
「ハオ!危ない!」
「へ!?」
その言葉が聞こえた瞬間、口に異物感があった。口に入ってきた瞬間の味で酒と分かったので飲み込まないようにと息を止めた。しかし、軽くお腹を押されると、息を止めていたのにもかかわらず一気にお酒が中に入り込む。
(一体どうなってるんだ!?)
「にゅふふふf。甘いにゃ、ハオ。医療関係者をなめたらいけないんだにゃ。」
(チャオ!別になめてねえってえの!ってそうじゃねえーーー!)
口が開けずお酒はその間にもどんどん体内に入っていく。
〈テムをやったのもチャオ・・・・か・・・・・。)
「何やってんだい!チャオ!!!ハオ・・・・しっかり・・・・・し・・・・な・・・・・・・。」
フェリアーテに吹っ飛ばされるチャオとフェリアーテの心配そうな顔を見た後、一気にアルコールが回りハオの意識は失われた。