フェリアーテ改心秘話(中編)

「・・・と言う訳だよ。皆いいね?」
フェリアーテ達はガンビアス大寺院から一番近い町の宿屋で打ち合わせをしていた。皆は静かに頷いた。
「じゃあ、今日はこれで解散。皆、部屋に戻って明日からの準備をしておくれ。宜しく頼むよ。」
その言葉が終わると皆は部屋から出ていった。
「イクリプストーチ・・・か・・・。」
フェリアーテは皆が出ていった後呟いた。
(あれは一体何なんだ?一つだけ言える事はただの炎じゃ無いって事は間違い無いね。待ってなよ、必ず手に入れてあんたの正体見切ってやるよ。)
フェりアーテは不敵に笑った。


「ラジャ様。先程からずっとお考えの様ですが・・・。やはりあの赤髪の女性の事ですか?」
お付の一人はさっきからずっと考え込んでいるラジャに尋ねた。
「うむ、まあそれもあるが、それよりもイクリプストーチの輝きが変わった方が気になっておる。」
ラジャは難しい顔をして答えた。
「まさかとは思いますが、あの女性は魔物が化けたものとでも?」
もう一人のお付が厳しい顔つきで言う。
「それもありうる・・・。理由は何にせよ、御神体をどうにかしようとしておるのは間違い無いじゃろう。」
ラジャは手を顎に当てた。
「如何なさいますか?」
「とりあえず、警備を強化しておこう。お前達はわしの事は良いから、交代で御神体の警護に当たってくれ。いいか、くれぐれも周りに警護している事を悟られん様にな。」
聞かれたラジャは直ぐに答えた。
「かしこまりました。それでは早速私の方が参ります。」
そう言うが早いか一人のお付が部屋から出ていった。
(それにしても、あの女性は何者なんじゃ?)
ラジャは再び目を閉じて思案に入った。


次の日・・・
フェリアーテの盗賊団の半数が作戦通りガンビアス大寺院に参拝していた。
一方のフェリアーテは町で買い物をしていた。
(奴等寒い思いしてもらうからね。少し差し入れくらいしてやんないとね。)
道具屋で多めに買い物を済ませてから宿屋へ戻った。
「フェリー。良いか?」
表から声がしてフェリアーテはドアを開けた。入り口には右腕的存在のラースが立っていた。
「どうしたんだい、ラース?まあいいや、とりあえずここじゃ何だから中に入んなよ。」
「ああ、悪いな。」
ラースは中に入り椅子に腰掛けた。フェリアーテも丁度正面になる様に椅子を移動させて座った。
「改まって何だい?」
「いや、この仕事が終わったらどうするのかと思ってな。」
ラースは意味ありげに言う。
「終わったらか・・・。いつもの通りさして考えちゃいないんだけどね。とりあえずこの寒いデゾリスとはおさらばして、モタビアに戻ろうとは思ってるよ。皆もここに長居はしたく無さそうだしね。」
苦笑いしながらフェリアーテは言う。
「そうだな。ここまで来るのだけでも大変だったからな。俺も正直さっさとここからはおさらばしたい。」
ラースははっきりと言い切る。
「悪いねえ。あたいの我侭で着き合わせちまって。ただ、今回の獲物はこの苦労に見合うだけのものだと思うよ。」
そう言ってフェリアーテは少しニッと笑う。
「フェリーがそう言うならそれなりのものだろうな。それでだ、戻るのはいい。どうだ、そろそろ相手を見つけてみんか?」
(ははーん。それを言いたかった訳か。)
ラースの言葉にフェリアーテは内心納得していた。
「今はとにかく、あのイクリプストーチを手に入れる事に全力を尽くすよ。それで、終わったらちゃんと考えるよ。約束する。」
「そこまで言ってくれるのなら安心だ。」
本当にホッとした顔でラースは言う。
「ふふっ。お互いドジらないように、ね。」
フェリアーテはそう言いながら軽くウインクする。
「ああ、いつも通りにやるさ。じゃあ、邪魔したな。」
ラースはそれだけ言うと軽く手を上げて部屋から出ていった。フェリアーテはそれを見送ってから、
「よしっ!明日が正念場だね。」
そう言って軽く頬を叩いた。


次の日・・・
朝から吹雪も止んで快晴である。ただ、気温はものすごく下がっていた。
「くうー。寒いねえ。」
防寒具を着てても寒さが身にしみてくる。フェリアーテは苦笑いしながらガンビアス大寺院へ向かっていた。他のメンバーも昨日フェリアーテが買った荷物を背負って後から着いて来ていた。
そして、いよいよガンビアス大寺院の中へ入っていった。
「さあ、皆頼むよ!」
フェリアーテはそう呟いてから防寒具を脱ぎ去った。